|
5月1日に全米の各都市で、不法移民のステータスの改善を求めて、プロテスト、ボイコットなどが行われましたが、ここでは具体的に、今議論されている移民法改正法案について説明します。
現在(2006年5月の時点)問題になっている移民法改正法案には2つの目的が含まれています。一つは国境や国内での不法移民の取り締まりです。そしてもう一つがすでにアメリカに滞在している不法移民の合法化です。ブッシュ大統領はこの両方を含めて、「包括的」は改正を議会で通すように、強い呼びかけてきました。
実は、2005年12月、米下院議会では、ある移民法改正法案を可決しました。しかし、この法案は、主に取締り中心になっており、1100万人もいるといわれている不法滞在者らをどのようにするのか、という核心の問題には触れられていませんでした。下院を通過したこの法案は、上院議会に送られ、現在、司法委員会などで議論されており、上院では、スペクター議員(共和党)などが下院とは異なる個別の法案を提出しました。
スペクター上院議員が提出した法案は、下院の一方的な取締りだけのものと異なり、不法移民の合法化、ゲストワーカープログラムなど、数々のベネフィットが含まれています。その法案は4月に司法委員会で可決され、現在、上院全体での採決を待っているところです。手続き上の事情などで、採決をするところまで行っていませんが、5月中に上院による可決がなければ、今回(第109回、2005年1月〜2007年1月)の米議会では、移民法改正は難しくなり、ブッシュ大統領の任期中にも改正される可能性も少なくなります。
仮に上院で可決された場合、その後、下院との調整があり、最終的にブッシュ大統領が承認をすることになれば、正式に移民法改正が法律になります。ブッシュ大統領は取締りのみの一方的な法律を承認しない可能性が高いため、議会の賛成派としては「包括的」な法律を通す必要があります。しかし、その反面、より多くの議員のサポートを得るために、賛成派はこれから色々な妥協案を提示しないといけません。従って、最終的にどのような法律になるかは、今の時点では予想不可能ですが、以下では現在の上院の法案概要について解説します。
1)国境警備の強化
今後数年に渡り、年間2000人以上の国境警備員を導入。移民ステータスを証明する書類・証書は全て機会で読み取れるものとなり、永住権保有者も出入国の度に機械による指紋押捺などを行います。また、I-94に表記されている期間より滞在を超えてしまった場合は、そのI-94に該当するビザだけでなく、あらゆるビザ資格を失います。
2)国内での犯罪者取締り
結婚詐欺、EB-5の偽証申告、3度目の飲酒運転などの犯罪は「凶悪犯罪」のカテゴリーに入れられ、国外退去など従来より厳しい罰則が科せられる場合があります。
3)不法就労者の雇用
雇用主は就労資格を確認する政府のデータベース・システムを導入する事になります。国土安全保障省が予算を受け取り次第18ヶ月以内に、大企業から導入が始まり、中小企業にも順次導入が実施されます。
4)H-2C及びH-1B
新たに「H-2C」というビザタイプが設定されます。ビザ有効期間は3年、更新すれば最長6年まで有効。該当資格は現行の就労ビザとは重複せず、「ゲストワーカー」的な簡易なものであると予測されます。年間枠は32万5千件で、初年度の申請者数によっては年間枠が翌年から10〜20%増加する可能性もあります。また、H-2Cを通産4年間保有した方は、永住権申請が可能になり、労働認定書(Labor
Certification)及び、I-140などの手続き待ちをしている間は1年毎にステータスを延長出来ます。
「H-1B」に関しても明るいニュースがあります。法律が実施された後、3年間にわたり年間枠を現行の6満5千件から11万5千件に増加させます。この3年間で年間枠に達してしまっている場合は、その翌年からは最大20%の年間枠増加の可能性もあります。
5)雇用主スポンサー永住権及び学生ビザ
雇用主スポンサーによる永住権の年間枠が現行の14万件から45万件へと増加されます。カテゴリーは一部変更され、現行のEB-3内の「Unskilled
Worker」が単独のカテゴリーとして存在し、雇用スポンサー永住権年間枠の30%が割り当てられます。 学生ビザでは、プラクティカル・トレーニング期間が現行の1年から「2年」へと変更されます。また、大学院レベルで数学、工学、科学、物理など専攻する学生には新たに「F4」というビザが設定され、学位完了後1年以内に雇用主スポンサー永住権を申請した場合、永住権を取得するまでF4ステータスを延期出来ます。また、大学院レベルで数学、工学、科学、物理などの学位を取得した学生で、永住権申請前に3年間、同様の分野で就労していた場合、永住権の年間枠には該当しませんので、該当資格さえ満たせば確実に永住権が取れる仕組みになっています。
6)不法滞在者
不法滞在者には、その不法滞在期間によって異なる対応がされています。
「5年以上」:2006年4月5日時点で5年間、またはそれ以上不法滞在しており、その間、短期的にしか国外へ出ていない場合は$2000を支払えば永住権申請が出来ます。また、過去に怠った納税額を支払う義務も発生します。
「2年〜5年」:2004年1月7日時点でアメリカ国内におり、その間、短期的にしか国外へ出ておらず、この法律が執行された時点で就労・学生ビザなどを保有していない場合は、一度国外で出て、再度入国を申請するチャンスが与えられます。国内でのビザ変更、永住権申請は出来ません。
「2年以下」:2003年12月31日〜2005年12月31日までの間に、少なくとも150日間、農業にまつわる職に就いていた者には「ブルーカード」というビザが与えれ、法の執行後5年間にわたり計150万件発行されます。
(5月15日更新) |